アスペルガー症候群とは、生まれつきの脳の機能障害で、自閉症の一種です。
最近では、自閉症周辺の障害は「自閉症スペクトラム障害」という名称に統一され、
「アスペルガー症候群」という診断名は削除されました。
アスペルガー症候群も自閉症の仲間ですので、「社会性の障害」
「コミュニケーションの障害」「想像力の障害」の3つ組の特性を持っています。
ただし、アスペルガー症候群の場合、言葉の発達に遅れはないため、
コミュニケーションの障害に気づかれにくく、障害を抱えていることが
わかりにくい場合があります。
そのため、単に扱いにくい、変わっている子どもとしてとらえられ、
適切な対応をしてもらえず、自己肯定感が下がりがちです。
自己肯定感が下がってしまうと、うつ病などの二次障害を
引き起こしてしまいますから、適切な対応が必要です。
アスペルガー症候群の子どもに対応する場合、一番大事なことは
いわずもがな、「障害について正しい理解をすること」です。
障害の特性により、困った行動や不適切な行動をしてしまうのであって、
決してふざけたり、わざとそのような行動をとっているわけではないことを、理解してください。
【アスペルガー症候群の子どもへの対応】
★指示はひとつずつ出す
アスペルガー症候群の子どもは、たくさんの指示を一度に理解するのが苦手です。
一度にいろいろな指示を出されると、混乱して動けなくなったり、パニックになります。
ですから、すべきことを、ひとつずつ指示してください。
★指示は具体的に
アスペルガー症候群の子どもは、あいまいな表現や抽象的なものごとを理解するのが苦手です。
ですから、指示を出すときは明確にしてください。
例えば「あそこにあるノートをとってきて」というのではなく、
「右から3番目の机に乗っている、青い色のノートをとってきて」
という風に具体的に指示を出してください。
★指示は短く
アスペルガー症候群の子どもは、たくさんの情報を
頭にとどめておくことが苦手なことが多いです。
ですから、指示は短くわかりやすく出してください。
上の例でいうと、「右から3番目の机に行ってください」と言い、
子どもがその通りに動いたら「青い色のノートをもってください」、
「ノートを持ってきてください」という風に、ひとつずつの行動を
分けて指示するとわかりやすくなり、うまく指示に従うことができます。
★視覚的に伝える
耳からの情報が入りにくい場合、文字やイラスト、写真を見せるなど、
視覚的に物事を伝えると伝わりやすい場合があります。
視覚優位の子どもには、文字やイラスト、写真などを使って、
ルールや指示を伝えるとよいでしょう。
★肯定的な表現で
指示を出したり、叱るときは肯定的な表現をしましょう。
「○○してはダメ!」というのは否定的な言い方です。
「○○しましょう」と、好ましい行動を教えるのが、肯定的な言い方です。
アスペルガー症候群の子どもは、否定的な言葉に敏感で、傷つきやすいです。
また、否定されたことを、ずばぬけた記憶力で長期間記憶していることがあります。
その記憶によって、何度も繰り返し傷ついてしまうこともありますから、
表現には十分注意してください。
また、叱るときは感情的にならず、
落ち着いたトーンで何がいけなかったのか教えてください。
感情的になったり、大声で叱られると、「怒られた」という感覚が頭を支配し、
内容が理解できなくなります。
★見通しを立てる
アスペルガー症候群の子どもは、見通しが立たないことを不安に思います。
予定が決まっているときは、あらかじめ教えてください。
そうすることで安心します。
また、予定の急な変更も苦手なため、予定を伝えるときは
「予定は変更することもある」ことをきちんと伝えてください。
★できないことがあるとき
できないことがあるときは、その物事をさせないのではなく、
どうすればできるようになるか、一緒に考えてください。
できないことをほかの人がやってしまえば、簡単におわるかもしれません。
しかしそれは、アスペルガー症候群の子どもの成長の機会を
奪ってしまうことになりかねません。
代わりになる方法はないか、何か補助具を使えばできるようにならないか、
一緒に考えてください。
それが将来的には、当事者の「自分への支援」につながります。
★感覚過敏に理解を
アスペルガー症候群の子どもは、感覚の過敏を持ち合わせていることが多いです。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・痛覚の過敏は、本人には耐えがたいものです。
感覚過敏を軽減する対策を取ってください。痛覚の鈍麻に関しては、
けがに気づかないことがあるため、注意が必要です。
★パニックを起こしたら
アスペルガー症候群の子どもがパニックを起こしていたら、
叱ったり無理やりなだめたりせず、まずは安全な場所で一人にして、
見守ってください。
必ず、少し離れた場所での見守りをお願いします。
パニックを起こしていても、自分で自分を落ち着けようともがいています。
声をかけられると、かえってパニックを長引かせてしまいます。
落ち着ける環境を用意し、本人が落ち着くまで見守ってください。